北野武監督「アキレスと亀」で幸せを問う - 日本
By Callum
at 2008-09-22T08:50
at 2008-09-22T08:50
Table of Contents
北野武監督「アキレスと亀」で幸せを問う
<最新作「アキレスと亀」公開初日インタビュー>
北野武監督(61)の最新作「アキレスと亀」が20日、公開初日を迎えた。画家と
して成功をつかめなかった男と、その妻の姿を描きながら「幸せとは」を静かに問いか
ける感動作。難解で破壊的といわれた最近の作品とはうって変わり、「王道を意識した
」という新しいキタノワールドをみせている。「心境の変化」と「幸せ」について、北
野監督に聞いた。
北野監督はここ数年、自作について「どうせ客が来ないから」と自暴自棄に語ること
が多かった。だが、「アキレスと亀」について語る顔はすこぶる明るい。「あまり偉そ
うに言いたくないけど」と切り出し「もう1回お客さんに近づいてみようと思ったんだ
」。
欧州の評価は揺るぎないものの、05年「TAKESHIS’」は難解と言われ、昨
年の「監督・ばんざい」は興行不振に終わった。「斬新なことをやっているといくら言
っても、客が付いてこなければ、まるで売れない芸人。客を引っ張り直そうと思った。
また付いてきたら、徐々に逃げようかって思ってる」と笑った。
意識したのは「王道」。撮影前、黒沢明監督ら巨匠の名作を見た。「助監督とかやっ
てないから王道の映画作りを知らないんだ。監督を始めた時、なめられちゃいけないと
思って、王道をなぞることをしなかった。吉兆とか老舗の料亭で修業せず、勝手に創作
料理を始めて、意外に評価されちゃって、その気になったら『あれ、おれの味を分かっ
てくれないな』となっていた」。
最近は構成で独自性を打ち出すなど映画の常識破りに専心する印象が強かった。だか
ら、新作は主人公の半生を順を追って丁寧に描いた。「料理で言えば、あれこれぶっか
けちゃえば、ダシなんか分かりゃしねえし、そもそも材料が何か分からないだろという
ようなことを平気でやってきた。今度はシイタケや昆布、かつおぶしでちゃんとダシを
とった感じかな」。
「アキレスと亀」の主人公は世間の評価や成功を得ることもないまま創作を続ける画
家。心から打ち込める芸術に出合い喜びを感じている。映画は「幸せの意味」を問いか
ける。
「今はタレントとしてお金もらって、それなりに家や車もある生活をしてるけど、実
際は知らないという前提で話せば、幸せな人生って何だと考えると、学者になって研究
室で1日過ごし、家に帰って酒を飲んで寝る毎日もいいかなって。現実にはビートたけ
しとかいってワイワイやってるけど、『いつかはノーベル賞』とか言いながらゲラゲラ
笑って研究している生活も幸せかなと考えるね」。
「漫才師も映画監督も別にやりたかったわけじゃない」。学生時代はエンジニアにあ
こがれていた。「今も頭をよぎるよ。寝ながら数学や物理の本を読んでいる時、新しい
化学合成で、がんの特効薬とか、とんでもないものが作れないかなとか考えている」。
少年時代はペンキ職人だった父を反面教師に「幸せ」を考えた。「仕事が終わると行
きつけの飲み屋で毎日、同じ酒と煮込みやアジフライみたいな同じつまみを頼む。漆塗
りやゲタ作りの職人も集まるから仕事のことや親方の悪口をしゃべるのが楽しくてしょ
うがない。それ以外のことは望んでない感じ。その後パチンコに行ってスナックに寄っ
て帰ってくる。子どもながらに、父ちゃんのようになりたくないと思ったね」。
大学中退後、アルバイト生活を経て浅草フランス座のエレベーターボーイをしながら
芸人見習いに。「なりたくて漫才師になったやつは幸せだったと思うね。仲間とその世
界を楽しめばいいんだから。おれはなりたくってなった覚えはなかった。喜んでいる場
合じゃなかった。売れなきゃいけないと思ったんだ。飲み屋に集まりワイワイ騒いで、
そのまま浅草で芸人として死ねる幸せも分かるけど、こんな貧乏くさい世界なんて嫌だ
と思っていたね」。
幸せをつかむため大人は子どもに「夢を持て」と教える。「誰にでも何か才能がある
から、誇れるものを見つけなさい」と励ます。北野監督は「無理やり夢を持たせるのは
やめた方がいい」と断言する。「秋葉原の通り魔事件が起きる前から言ってたけど、要
するに世の中が普通の人を認めていないんだ」。
さらに「夢もなく才能もなく金もなきゃ生きてちゃいけないのかって。おれなんか子
どものころ、何かやろうとすると『あんたはバカなんだから』『うちは貧乏なんだから
』と怒られて終わり。でも何かをやるやつは分をわきまえながらも、どうやってチャン
スをつかみ取ろうか考える。放っておいても出てくる。夢を持てなんて強制しちゃダメ
。強制するからかなわないとちょっとしたことでキレるんだ」と続けた。
「人生なんて、やることが見つかるだけで十分幸せなんだよ」。北野監督のつぶやき
が「アキレスと亀」の主人公の生きざまに重なった。【松田秀彦】
[2008年9月21日12時35分 紙面から]
http://0rz.tw/044Nd
--
Tags:
日本
All Comments
Related Posts
導演市川準 腦溢血猝死 享年59歲
By Lauren
at 2008-09-20T10:45
at 2008-09-20T10:45
2008年金馬影展「市川崑專題」-全10支放映
By Lydia
at 2008-09-20T08:34
at 2008-09-20T08:34
很久以前的情書
By Kelly
at 2008-09-19T22:00
at 2008-09-19T22:00
本週新片「海賊王之再續幸福三丁目」
By Ethan
at 2008-09-19T20:09
at 2008-09-19T20:09
伊藤英明 毀了富士電視台
By Daniel
at 2008-09-19T18:51
at 2008-09-19T18:51